カメカミ幸福論
「別に好きな人が出来たらどうするの?」
ちょっとばかり気になったことを聞いてみる。その場合はどうなるの?既にそのつもりのお父さん達の説得をするのだろうか、と思って。
美紀ちゃんは食堂の看板で本日の定食を確認しながら、どうでも良さそうに言った。
「うーん・・・まあ、なさそうですけど・・・。解消、するんじゃないですか?今は、どっちもそのつもりでいますけどねえ。来年にはって親が盛り上がってるし」
「え、来年には美紀ちゃんたら結婚?」
私はパッと隣を振り返った。つい声が大きくなってしまったらしい。順番待ちをしている時に話すにはあまりにもプライベートなことだったわ、そう思って慌てて口元を覆う。
彼女も小声になって言った。
「多分そうなると思います。元々私も彼も恋愛体質ではないみたいだし、このまま進むんじゃないかな」
「え、え、じゃあ仕事は?」
辞めちゃうの!?私にとってはそこが大事なところなのだ!うちの頼りになる後輩が、辞めてしまったら――――――――事務所、すんごい大変。
すると美紀ちゃんはにやりと笑って首を振った。
「まさか。妊娠でもすれば話は違いますけど、結婚したからって何で仕事を辞めるんですか?私、亀山さんが心配だし、まだ当分見守らなきゃでしょ」
私はほーっと胸を撫で下ろした。心臓に悪いったら、全く。
「ああ良かった。私のことはともかく、美紀ちゃんがいなくなるとうちの会社はかなりの損害よ」
本心からそう言うと、彼女は嬉しそうに笑う。それから、やっと順番が回ってきた食券を買うために財布を開けた。