カメカミ幸福論
時間は進んでいって、こうやって周囲も少しずつ変わっていく。
古い人が辞めて、新しい人が入ってくる。会社のシステムも少しずつ変わり、5年前の常識が今では非常識になってしまう。
その変化は体験中はちょっとしたことでも、後からみれば結構な大きさとなっていることが多い。
私は暑さとパソコンで疲れた胃を慰めるために熱い月見うどんをすすりながら、そんなことをぼんやり考えていた。
前では美紀ちゃんが明るく話している。
今進行中の企画、それから事務所のアレコレ。会社のこと、それから昨日のテレビのこと。
それから―――――――――
「あ、小暮課長、お疲れ様です!」
彼女の笑顔が更にパワーアップした。
「ぐふっ!」
私は一瞬うどんを喉に詰まらせそうになって死にそうな思いをする。出た!?出たの、あの男が!?そう思ったからだった。
「お疲れさま、山本さん。亀山――――――ちょっと詰めて」
爽やかな低い声が頭の上から降ってきて、私はその正体を見る暇もなく隣の椅子に置いた自分のひざ掛けを退ける羽目になる。
「ありがと」
カツカレーをトレイに載せた小暮が、愛嬌ある笑顔で私を見下ろしていた。
「・・・お疲れ」