カメカミ幸福論
きまり悪くてぼそぼそと返す。あれ?今日は会社にいたの?営業なんだから外回りしてなさいよ、そう頭の中で呟きながら、私はうどんをお箸で掻き回す。
「あ!そうだ」
次の瞬間美紀ちゃんが前の席から立ち上がって、私はえ?と彼女を見上げた。
「すみません亀山さん。先に戻りますね、笹田さんへ電話しなきゃならないんで」
に~っこりと、大きな笑顔の美紀ちゃん。
「え?電話?」
「そうです。今定食食べてて思い出したんですけど、企画の件で、ええ」
そう言ってニコニコと微笑む後輩を、私は苦々しく睨んだ。思い出しただと!?笹田さんに電話~??そんな話はカケラもなかったじゃないの、さっきまで!!
「では小暮課長、失礼します。どうぞごゆっくり」
おいおい露骨だよ、美紀ちゃん。呟けど、行動力のある後輩はすでにおらず。総務も今忙しいんだな、と隣でいう小暮に曖昧に笑ってみせただけだった。
・・・くそ。
結局騒がしい食堂の端っこで、私は小暮と二人でご飯を食べることになっている。一々確認はしないけど、きっとこれを派遣社員さんの団体さんは睨みつけているのだろうし、それに、ダンも喜んで――――――――――
・・・見てねーだろうな、まさか。
私はお箸を持ったままで、思わずキョロキョロと周囲を見回した。天井の辺りは特に丹念に。やっぱりヤツはいなかったけど。
「どうした?」
小暮がガツガツと食べながらそう聞く。私は慌ててうどんを凝視した。