カメカミ幸福論
「いえ、別に、何でも」
「誰か探してるのか?」
「うん?・・・そんなことないわよ?」
ふーん、と小暮が呟いて、冷水を飲み干す。焦っていた私はつい、彼にピッチャーで水をサーブしてしまった。
「あ、サンキュ。ってかカメ、よくキョロキョロしてるよな」
「そ、そう!?」
声が裏返ってしまった。何か硬いもので自分の頭をどつきたい衝動を抑えながら、私はまたもやうどんを凝視する。落ち着け落ち着け。何でもないことでしょ、私!
「うん。だから誰か探してんのかなって」
スプーンをさっさと動かしながら、小暮は淡々と私を追い詰める。声が思わず低くなってしまったのは仕方ないことだと自分でも思いたい。
「いや、別に誰も探してない」
「だってさっきもキョロキョロと」
「・・・してないわよ」
「してたぞ」
「してない」
ううう~!!イライラして、私はぐっと顔を顰める。ああ、これでまた皺が増えちゃうじゃねーかよ、くそ。
食欲がなくなってお箸を放り出す。
小暮はチラリと私を見て、苦笑したあとで言った。
「・・・まあ、別にいいんだけど。なあカメ、もしかして、俺って邪魔?」
「へ」