カメカミ幸福論
「良かったな」
「うん」
「それは良かった。商売繁盛なわけだ」
「うん」
「しかも体調もいい」
「うん」
「今晩飲みにいかないか?」
「うんってば!―――――――・・・へ?」
しつこいな!そう思って声を荒げて、つい、答えてしまっていた。私はぱっと隣を見る。・・・今、何てった?
目の前には嬉しそうに笑った小暮の顔。ガタンと音を立てて椅子から立ち上がる。
「じゃ、仕事上がったら前の居酒屋で」
「えっ!?ちょっと―――――――小暮?」
「お先~」
最後ににやりと笑って素早くトレーを持って、多忙な営業職のヤツは行ってしまった。
・・・あれ?
あとに残された私は一人で、食べ切れないうどんの丼を前に呆然としてしまっている。何か今、とても素早く罠にひっかかってしまったような気が?
ってかそうなのか。私はヤツの、営業トークにまんまと絡め取られて――――――――・・・
・・・え?ご飯、食べるってこと?
小暮と?
私が?
二人で?
今晩?
「・・・ええ~・・・・・」
どうしてこんなことに。私はそう呟きながら、脱力して椅子にもたれかかったのだった。