カメカミ幸福論
「え、嫌よ。とにかく仕事が進まないってだけで頭痛いのに」
「そう言わずに!小暮課長と何かあったんでしょ、ねえねえ」
「仕事に支配されてて何も思い浮かばないわ~」
「・・・仕方ないですね、それ、半分私が受け持ちます」
だから、さあ!そう言って美紀ちゃんは椅子を持ってきて私の隣に座ってしまう。
課長は出張で不在、他の事務員達は出かけていたり同じくコーヒーブレイクに給湯室へ行ったりしているようで、部屋の中は二人きりだった。すでに面倒臭い仕事の放棄を望んでいた私は情報くらいならと進んで取引に応じる。
「小暮にご飯誘われた」
「おおおー!!!」
きらりん、と美紀ちゃんの瞳が輝いた。私はすばやく書類の半分を彼女の手に握らせる。よし、やった!
「え、え、それって今夜ですか?それでもって、どこで?」
「教えない」
「亀山さん~!!」
何でですか!そう詰め寄る美紀ちゃんに、私は残りの書類の山を指差す。
「だってこのままだったら残業決定で、約束はキャンセルになるだろうし」
「もう半分引き受けます!」
よしよしよ~し。私は更に書類の半分を彼女の手に載せる。処理能力は私なんかより美紀ちゃんの方がいいのだ。君がやったら物事が素早く終わるしね!