カメカミ幸福論


 肩の荷を4分の3も下ろした私が嬉しくコーヒーを飲むと、美紀ちゃんは一度自席に戻って書類を置き、すぐに戻ってきた。

「これでデートにはいけるわけですよね?じゃあ化粧直しもして下さいね、亀山さん」

「は?何でそんなこと。私が化粧ポーチなんて持ってると思う?」

「持ってないんですかっ?!」

 愕然とする美紀ちゅんにケラケラと笑って、私は手を顔の前でピラピラと振る。

「それに第一、ちょっと直した程度じゃ変わらないわよこの顔は」

 その実にやる気のない返答にも、美紀ちゃんはめげなかった。さ、休憩は終わりですよ、といきなり鬼のようになって、私からコーヒーを取り上げる。

「美紀ちゃん~?」

「仕事です仕事!私が減らしたのだから、残りはさっさと仕上げて下さい!そして今晩は是非お食事に!でないと―――――――――――」

「・・・でないと?」

 私はおそるおそる事務所内での最権力者を見上げる。

 そこにはにっこりと可憐な微笑みの美紀ちゃん。きゅっと口角を吊り上げて、こうのたもうた。

「社内メールで小暮課長と亀山さんのデート、ばらします」

「――――――――――――」

 何だってえええええええええ~っ!!!

 私は仰天して口があきっぱなしだった。間違いなく歴史的不細工な顔をしていたはずだ。だけどそんな事に構ってられるかい!まさしくそんな脅迫がありますかいな!状態だ。


< 175 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop