カメカミ幸福論
肩の荷を4分の3も下ろした私が嬉しくコーヒーを飲むと、美紀ちゃんは一度自席に戻って書類を置き、すぐに戻ってきた。
「これでデートにはいけるわけですよね?じゃあ化粧直しもして下さいね、亀山さん」
「は?何でそんなこと。私が化粧ポーチなんて持ってると思う?」
「持ってないんですかっ?!」
愕然とする美紀ちゅんにケラケラと笑って、私は手を顔の前でピラピラと振る。
「それに第一、ちょっと直した程度じゃ変わらないわよこの顔は」
その実にやる気のない返答にも、美紀ちゃんはめげなかった。さ、休憩は終わりですよ、といきなり鬼のようになって、私からコーヒーを取り上げる。
「美紀ちゃん~?」
「仕事です仕事!私が減らしたのだから、残りはさっさと仕上げて下さい!そして今晩は是非お食事に!でないと―――――――――――」
「・・・でないと?」
私はおそるおそる事務所内での最権力者を見上げる。
そこにはにっこりと可憐な微笑みの美紀ちゃん。きゅっと口角を吊り上げて、こうのたもうた。
「社内メールで小暮課長と亀山さんのデート、ばらします」
「――――――――――――」
何だってえええええええええ~っ!!!
私は仰天して口があきっぱなしだった。間違いなく歴史的不細工な顔をしていたはずだ。だけどそんな事に構ってられるかい!まさしくそんな脅迫がありますかいな!状態だ。