カメカミ幸福論
夜7時。
私は先日美紀ちゃんと行き、そしてその夜に小暮から告白を受けてしまう結果になった居酒屋へ、一人で入っていった。
まだ小暮は来てないようだったので、椅子について飲み物だけ注文する。とにかく先にアルコールをいれておくほうがいいかも、と思ったのだ。
小暮と二人で飲食したことなんてない(社員食堂は除く)。今までは同期の飲み会だったし、私は彼に特別なものは何も感じてなかったのだから。
ところか告白されて以来、ダンの喧しい忠告や美紀ちゃんの露骨な引っ付けよう作戦のせいで、今までただの同期だった小暮の男性らしい面や優しい性格、それから爽やかな笑顔なんかがクローズアップされてしまっていた。気づいてしまった、というのが正しいのか。ああ、こいつ、妙齢の男だったんだなあ~、という感じ。
なんであいつ、まだフリーなの?
ちっとも気にしたことがなかったその情報に、私は不機嫌に唸った。
ダンが現れてから抱き寄せられたりキスされたりで、(その点、ダンは外見のすこぶるいい男神だったので)やはり意識をし、少しばかり女モードが戻っているらしい私の閉鎖的な脳みそも、さすがにこんな機会には緊張したらしい。
「ああ、美味しい・・・」
とりあえずと注文した生中を半分くらいまで飲んで、私はぎゅうっと目を瞑った。
ダンが消えてから、アルコールが増えていた。
とにかくヤツから考えを逸らしたくて、出来ることは何でもした。
今日は緊張を解くためだけど、やっぱりビールって最高――――――――――――
「ごめん、遅れた」