カメカミ幸福論


 声が上から降ってきて、すぐ前の席に細身でも大きな体が座るのが判った。

 私はパッと目を開く。

 そこにはブルーのネクタイに指をひっかけて緩めながら笑う、小暮がいた。

「もうそんなに飲んでんの?俺も生中にしよ」

「・・・喉、渇いてて。お疲れ様」

 うん、そうニコニコと笑って、小暮はやってきた店員に注文をする。私はドギマギしてしまい、目を泳がせながらビールを飲み干した。

「ほら、またキョロキョロしてる」

「違っ・・・あの、ちょっと緊張して・・・」

 おっとつい滑らした!私はぐっと口をつぐんだ。弱みを見せるようでバレたくなかったのに。もう、私ったら!

 案の定、小暮はそれを聞いてにやりと笑う。

「緊張?俺と飲むのに?おおー、いいね、それって意識してるってことじゃん」

 ・・・くそ。

 やっきになって否定するのも悔しかったので、私は不機嫌な顔で肩を竦める。彼は全然気にしていないように、どれ食う?とメニューを見せてきた。

「好きなの頼んで。私つくねチーズがあればそれでいいや」

「カメ、チーズが好きだよな。前から思ってたけど」

 楽しそうにそう言ってから、小暮は慣れた感じで注文を済ませた。



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