カメカミ幸福論


 ちょっと驚いて、私は目を見開く。小暮、せっかちなのかと思ってたけど・・・実はあんた、じっくり時間をかけるタイプだったんだなあ!って。新発見だ。きっと同期のほとんどの人が、小暮に対して思っているイメージと違うにちがいない。

 用意周到でちゃきちゃきしてて―――――――じゃなかった、わけ?

「カメ、何で泣く?」

 スタスタと歩いてきて、キングサイズのベッドに腰掛けた小暮が聞いた。彼が腰掛けた重みで揺れながら、私はぐりぐりと目元を拳で拭う。そうだ、きっと今は酷い顔してるはずなんだった!

「え、いや・・・知らない。わかんないのよ」

「俺が知らない間に傷付けた、とかじゃない?」

「違うわ。ほんとに、今晩は楽しかったし。帰ろうと思ってたら急に胸がザワザワして、心細くなった。・・・何でか判らないのよ」

「自分でも?」

「そう。酷い顔してるし、覗き込むのやめてくれる」

「え、やだ」

 そういうなり、小暮は手を伸ばして私の顔を包み込む。そしてパッと自分の方へ向けさせた。

「ちょっと!」

 ばっちり両目が会って、私は赤面する。何でこんな近距離で、敢えて化粧の崩れた汚い目元を見られなきゃならないのよ~!!拷問か?!そう思ってそむけようとしたのだ。

 だけど、力では敵わなかった。

 小暮がにやりと笑った。アルコールの影響を受けていて、やつの目元も赤かった。


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