カメカミ幸福論
・自動的忘却
目を覚ましたら、自分がどこにいるのか判らなかった。
「・・・うん?」
いつものように布団から手を伸ばしてペンギンの目覚まし時計を止めようとして、まてよ、何か布団の感触が違うくない?と思って目を開けたのだった。
これ、私のタオルケットじゃない―――――――――――
寝ぼけた目でふと隣を見て、私はそのままぎょっとして声を上げそうになる。だって隣に男が寝てたんだよ!そりゃあビックリするってもので――――――――・・・
だけど、さすがにすぐ思い出した。
「・・・あ」
驚きでドキドキする心臓を押さえて、私はゆっくりとため息をはく。・・・ああ。そうか~・・・。
薄暗いホテルの部屋の大きなベッド、私の隣でまだ寝ている男は小暮。私の同期で、出世頭の、この間まで本当に1ミリだって何とも思ってない男だった。
それなのに、ああ、何てこと。
ぼりぼりと頭に手を突っ込んで掻く。・・・私、小暮と寝ちゃったのか~・・・。
そろそろと起き上がる。ホテルの小さめの窓の外はまだそれほど明るくなく、今がかなり早朝なんだって判った。
大人二人で寝ても十分な大きさのキングサイズのベッド。それだけでなく、いいものに見えるデスクや椅子や間接照明なんかも、ここがただの場末のラブホテルなんかでなく、それなりにいいランクのホテルなんだとわかった。
昨日は呆然としすぎて見えてなかった色んなことが、起き上がった私の頭に一気に押し寄せたのだ。