カメカミ幸福論
「おーい、かーめーやーまー。間が痛いんだけど、間が」
本当に痛そうに顔を歪めて、小暮がそういう。私はその声にハッとして、つい勢いよく頷いていた。
「えと、うん!勿論友達なんかじゃ・・・ない。あの・・・照れるわね、こういうの」
痛そうな顔をやめて、小暮がじっと私を見た。それからゆっくりと笑顔を作る。
「付き合うってことでいいんだな?」
「う・・・はい」
「お前は俺の恋人、そう?」
「うん」
「よし」
に~っこり、と、小暮が大きく笑った。それから布団に絡まりながらごろごろとベッドの上を転がっている。
「うわああ~、なんか、すっげー嬉しいもんだな~」
わーいわーい、と言いながらゴロゴロと転がる三十路男が一名。わーいって・・・嬉しそうだけど、子供かよ、あんたは。
「そ、そう。それは良かった。ええと・・・じゃあまあとにかく、昨日の分と今日の分は、ありがとう」
私はちょっと苦笑しながらそういって、鞄を持ち直す。それから、じゃあ先に出るね、会社遅れないようにね、と言ってドアに向かう。
「カメ!」
ドアを開けたところで小暮の声。私は、え?と振り返る。まだ真っ白な布団に包まれながら、彼がニコニコと笑って言った。
「ありがとう。また、会社でな」
片手をあげて私も笑う。それからゆっくりとドアを閉めた。