カメカミ幸福論
一度会社に戻り自転車を引き出して、駅3つ分の私のアパートまでを自転車で走る。夏とはいえまだ朝の爽やかな風が吹いて、さっき洗ったばかりの髪を乾かしていく。
・・・さっき、何か変だった。
私は無意識に自転車を漕ぎながら、少し前の時間へ頭を戻す。・・・何か、忘れてる感じがしたのよ。何か、誰か・・・。
小暮と付き合うって、そのことを考えて、ええと・・・違和感があったような。
一体何を思ってたんだっけ?何を考えて変な気分になったんだっけ?
無理にその「何か」を思い出そうとすると、昨夜小暮とした色々な恥かしいことがバンバン浮かんでくるから困った。
一人で顔を赤くして、いつもの公園に自転車で乗り入れる。
そこでもまた、ぼんやりと変な気分になった。
漕ぐ足は止めなかった。
だけど、私はキョロキョロと公園の中を見回してしまう。
・・・・何か、忘れてる。
違和感だけを感じてもどかしい。それでも自転車は止めなかったから、公園はすぐに通り過ぎてしまった。何かあそこであったような。いや、そんなことないか。だってあそこは毎日通るんだし。でも、いや、だって・・・。
「何だってのよ、全く!」
何か気持ち悪い、その状態のままでアパートへ辿り着き、部屋へ入る。鍵を閉めて電気をつけて、新社会人になって以来ずっと一人で過ごしてきた部屋を見回した。
――――――――――何かが、足りない・・・ような。