カメカミ幸福論
お茶の淹れ方、資料の整え方、それから計算の仕方と総務パソコンのイロハ。必死で働いた数年間と、何もしなかった3年間は私をほどよいレベルの先輩に変えたらしい。厳しくはなく、うるさくもなく、力を抜くこともある指導者、という立場に。新人さんは緊張もそんなにせずに嬉しそうについてきてくれるし、後輩達は「亀山さん、まるで別人ですね~!」と、何だかなーな言葉つきで喜んでいるみたい。
おいおいキミタチね、と苦笑するときもあるけれど、それなりに楽しくなっていた。
会社が楽しいなんて、びっくりだわ。一人に戻るとき、たまにそう思うのだ。あんなにどうでもよかったのに、って。
このエネルギーはどこから沸いたんだろうかって。
・・・ほんと、謎だらけだわ。
「悪い~!!遅刻した!」
「悪いと思ってるなら遅刻するのやめなさいよ。もう帰ろうかと思ってたところ~」
「苛めるなよ、急いできたんだから」
「まず最初にごめんなさい、でしょ?」
「・・・すまん」
「本当に済まんだわ。じゃあ、さよなら~」
「カメ~!!」
小暮とは、こんな会話で始まるデートを数回している。忙しい営業の彼はそんなに暇が取れないけれど、元々長い間一人でいた私にはそれがそんなに苦痛じゃない。むしろ、小暮を待っている時に不思議に思うくらいだ。
あらあ?って。男を、彼氏を待ってるんだわ、私ったら!って。