カメカミ幸福論
彼のことを考えるとき、毎度何か不思議で曖昧な感情がわくのは秘密だ。何かを抜かしているような、わけわからないむずむず感。この感情、この感覚の正体はどれだけ考えても判らないけれど、とにかくそれは私だけの問題なのだろうって思うから。だって、小暮が来て、一緒に歩き出したらなくなる感覚なのだ。
何か、忘れてる気がする。
そう考えていた日々も、ずっと遠くになってしまった。
私は何と恋人がいて、以前はただ通うだけだった会社でも存在感があって、しかも、それを喜んで受け入れていたのだから。
恋って偉大ってこと?
たまに、そう思う。
あんなに全てのことに無関心だった私は何だったわけ?って。そもそもどうして小暮と恋人になったのか、そこのところがやっぱりハッキリしないのだけれど、だけど日々は過ぎて行きそれも全部過去になっていく――――――――――――――
「ねえ」
夜の公園を歩きながら、私は隣にいる小暮に話しかけた。
「ん?」
今晩も結構な量のお酒を飲んだ小暮は、上機嫌で見下ろしてくる。小暮は酒にも強いようだった。公園の中にある街灯の明りに顔が半分だけ照らされて、彼の骨格をハッキリと浮かび上がらせていた。
「あのさ、どうして私たち付き合うことになったんだっけ?」
とりあえず、聞いてみることにした。