カメカミ幸福論


 何かの処理・・・ええと、つまり、私との約束、幸せな記憶をくれるっていうのを果たしに戻ってきたのだと思っていたから、予想外のことに呆然としてしまったわけ。見開いた目が水分不足で痛い。思い出したように瞬きをして、私は引きつった笑みを浮かべた。

『・・・は?』

 声が戻ってると判ったのは、それが言えたからだ。

 ダンは待っているようだった。私は必要もない空咳をしてから、改めてダンに向き直った。凄い勢いで、今までのこと、ダンと出会ってからのことが頭の中を過ぎていった。

 どうしたらいいのかしら。ちょっとの間、真剣に考えて、それから、やっと口を開いたのだ。

『ダン、私はね―――――――――』

 ヤツはその場に浮かんだまま、じっと私の話を聞いていた。それから、口をとがらせて難しい顔をする。

『それは一度上で聞いてみないと判らない。どのくらいか判らないけれど、時間がいるなー』

『じゃあ聞いてきてよ』

『・・・ムツミ、頼みごとをする時の態度じゃないだろ、それは』

『何事も中途半端なあんたには言われたくないわ。私の最終的な返事はダンが戻って来て、答えをくれてからするわね。それもお互い様でしょ?』

 ふん、とねめつけながら言うと、ヤツは、折角わざわざ降りてきたのに~と大きなため息をついてぽりぽりと頭をかいた。そんな仕草でさえ、優雅に見えたから美形は得だな、ほんと。


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