カメカミ幸福論
・カメカミ幸福論
9月に入ってから、総務は激務だった。
そのわけは、これだ。今美紀ちゃんが手に掴んでいる、チラシに全てが書いてある。
「もう1週間しかないんですよ~!!さっさと仕上げましょう。ホウレンソウだけは皆さん、しっかりお願いしますね!」
朝礼で、出張中の課長に代わって発言していた美紀ちゃんの顔は、まさしく般若。これ見たら婚約者も結婚を考え直すのではないか、と思うほどの迫力だった。
はーい、と全員で仕方なく返事をする。勿論私も、小声だったけど返事はした。だって怖いんだもん。
チラシに書かれている文字は、これ。「第1回社内運動会」。楽しげなイラストと、無駄にたくさんの装飾が施された文字でギンギラだ。
何故か業績がよくなった我が社は、今年初めて社内運動会を催すことになったのだった。社長が現在ダイエットに励んでいるとの噂があるから、もしかしたら全社員はそれに巻き込まれただけかもしれない。
だけどとにかく会社創立以来一回目の運動会で、前例がないために何もかもが初めてで、指揮をとる・・・いや、違った、裏方の総務はひっくり返っていたのだった。記念すべき第一回目の運動会の指揮を取るのは「運動会チーム」。それが社長により社内に特別に創設されて、そこからくる電話や予算の相談に毎日あれまくっているのだ。
勿論、普段からちゃきちゃき動く美紀ちゃんは、一人ランニングマシーン化して飛び回っている。彼女が一般業務を出来ない分、それは私に回されたので、一度残業をしてしまった身分では断れず、そのまま勤労お局にならざるを得ない私だった。
・・・ああ、本当疲れたわ。