カメカミ幸福論


 自分で靴脱いで頭を叩きたかった。

 残念なことに、私の彼氏となったこの男は体育会系だったらしい。皆で何かするのが好きだし、一緒に汗をかくことに興奮するタイプ。つまり、私とは正反対だ。今日だって子供みたいにはしゃいでるに違いない。営業2課はとお~いところにテントがあるので私からは見えないが。

 とにかくそれで、カメは何に出るんだ?というキラキラした小暮の目に負けたのだ。

 だから私は、翌日には必死で少しでも楽な競技をとるべく奮闘した。そして手に入れたのが、大玉ころがしってわけ。

 ・・・デカイ玉転がすことの、一体どこが楽しいのよ!?もう。

「じゃ、いってきます・・・」

 集まってくださーい、の声がかかって、私はのろのろと立ち上がる。美紀ちゃんはガッツポーズを作って大きな声で言った。

「応援しますよ!頑張って下さいね!!」

 ・・・ああ、この子もアウトドア派だったんだ・・・。

 私はにへらっと笑って、亀のようなのろさで集合場所に向かった。


 結果は聞かないで頂戴。誰ともになく、私はそう呟く。

 とにかくこの暑い中走ったせいで、疲れがドッと出た。それを解消することが大事だわ。

 そう考えた私は一人でこっそりとその場を抜け出すべく小道に逸れていく。これで自分の出番は終わりだ、それにどうせ私がいなくても、大会は順調に進むわけだし、ちょっと休憩して―――――――――――――

「あ」

「あ」

 わき道に入った途端に、バッタリと、同期の倉井に出会ってしまった。


< 221 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop