カメカミ幸福論
ヤツも私と同じことを考えて、どこか一目につかないところでサボっていたらしい。服に草をつけてちょっと寝ぼけた顔をしていた。
寝てたのね、倉井は。何てヤツよ。私は自分のことは棚に上げて心の中でそう毒つく。
小道でバッタリあってしまったので体を避けて通らないと進めない。くそ、邪魔な野郎だぜ。私は出来るだけ無表情でそう思った。
飲み会に私をハブろうとしたのが判って以来、こいつとは会ったことがなかったのだ。久しぶりの同期対面とはいえ、やはり自分にハッキリした悪意を持っている人間と出会うのは気持ちいいものではない。むすっとするのも仕方ないわよね。
「お前もサボりか?」
倉井がにやりと笑う。私はむすっとしたままで、簡単に頷いた。
「疲れたから避難するの。ちょっとごめんね」
横を通り抜けようとしたその時、倉井が振り返って、なあ、と言った。
「ん?」
私も立ち止まる。
倉井は目を細めて、素敵な表情とはお世辞にも言えない意地悪そうな顔をしてこっちを見ていた。
「亀山、最近仕事に精だしてるって噂だけど、何かあったのか?」
「・・・」
おめーに関係ないよ。そう思ったけど、口には出さなかった。少しだけ間をあけて、私も意地悪い声を作って返す。
「給料泥棒って呼ばれるのに飽きたのよ。実は、私ったらやれば出来る人間なの」
あんたとは違って。それを暗にこめたけど、ヤツには判ったらしい。倉井は不機嫌な顔になって低い声で言った。