カメカミ幸福論


 ずんずんと部屋の中へすすみ、私はどっかりと腰を下ろす。胡坐をかいて男を見上げた。

「まあとりあえず、座ってよ」

「いや、これでいいよ」

 イライラ。堂々と舌打をかまして、私は畳の上にカーペットを敷いた床をビシっと指差す。

「座ってちょーだい。邪魔なのよ、そのデカイ図体が!」

 神はむっとしたようだ。さっきも見たぞ、その顔。案外人間臭いじゃないの?私は心の中でからかいながらヤツを見る。

「カメヤマムツミ」

「・・・フルネームで呼ぶのやめてくれる。あんたさっきから私の名前を連呼しているけれど、自分の名前は何なのよ?まさか神は名前なんてないってわけ?」

 私がそう噛み付くと、ヤツはちょっと困ったような顔をした。おお、早速ボロ出しか?!私は更に興奮する。ところが、鼻息荒くしかけた私に向かって、ヤツは相変わらず突っ立ったままでベラベラとワケわからないことを早口で言った。

「%&=!*X'+$?|」

「・・・あ?」

「天上ではそう呼ばれている。ムツミには発音出来ないだろう。名前というか・・・皆にはそう呼ばれているという感じだな。まあ、近い発音で短く言えばダンだろうし、それでいい」

「ダン?・・・ダダンダーン♪」

 私はつい、顔がアンパンで出来ている国民的ヒーローキャラの敵役であるばい菌キャラが作ったメカの名前を言ってみた。節つきで。だけど神はキョトンとしている。・・・神、知らないらしい。


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