カメカミ幸福論
さて、そう言ってダンは空を見上げる。
「今日は空気が澄んでいる。道も真っ直ぐだな」
「・・・戻るの?」
「そうだよ~」
「飛行機にぶつかったりしないでよね、無様だから」
「・・・・・ムツミ、最後まで喧嘩を売るのはやめろ」
うふふ、と私は笑う。
「じゃあ、これで本当に終わりね?」
「そう、終わりだ」
あんたとバカみたいなことで怒鳴りあうのも。
あんたとバカみたいなことで笑いあうのも。
あんたと、一緒にした、いろんなアレコレも――――――――・・・
私は数メートルの高さまで浮かび上がっているダンを見上げる。ヤツは太陽をバックに浮いていて、それはまるで後光のように見えた。
・・・まったく、最後まで眩しい男だわ。
手をかざして影をつくる。それからダンの不思議な瞳を見た。
数ヶ月前、神が降りてきた、固まって地面に這いつくばる私の元に。
そして、ヤツは奇跡を起こすのではなく、滅茶苦茶に生活をひっかきまわしてくれて――――――――――私を、少しだけ、変えた・・・。