カメカミ幸福論
「あのね、どうせ大した毎日でなくても、その一つ一つは紛れもなく私個人のものでしょ?だからそれを操作して幸せな記憶になんて、していらないっつーのよ」
ムスッとした顔丸出しで言ってやった。そんなことをしたら眉間にはくっきりと皺が刻まれているだろうし、口角も下がりまくりのどうしようもない顔になっているはずだ。だけど気にしない。だって目の前にいるのは、本人曰く人間ですらないようなのだから!
好印象を与えても無駄ってものだ。
「え、欲しくないか?幸せな記憶。泣くほど美味しいもの食べたとか、人に凄く感謝されたとか、そういうの」
「いりません。美味しいもの食べた記憶じゃなくて美味しいものを今出しなさいよ!どうして記憶だけなのよ、全く!記憶なんかより3億円欲しいわ私は!そしたら会社やめてやる」
「いや、だから、俺がいた期間の記憶をすり変えるってだけだから」
「いらないわよ!」
神・・・ダンはうーんと唸った。
「困ったな。こんなに最初から難しいなんて聞いてないぞ~。俺ってば専攻を選び損ねたかな・・・」
「専攻って、何のことよ」
聞きたいことは他にも山ほどあるが、何から聞いたらいいのか判らない。そんなわけで私はとにかく最新の謎に飛びついた。ダンと名乗った美形はにっこりと笑う。
その電灯がぱっとついたような強力な輝きを発する笑顔に一瞬視力を失ったかと思った。だけど、大丈夫。そんなことはないない。ないの!気~の~せ~い。