カメカミ幸福論
「人間のいうところの学校へ行っている。その試験なんだ。専攻が人間学、地上の一人の人間の行動を3ヶ月に渡って徹底的にリサーチすること、それが内容。で、俺の対象が――――――」
「私に決まった、それはさっき聞いたわよ。神って一人じゃないの?つまりあんたは学生な身分なわけ?全能の神はどこいったのよ?」
怒りに任せて矢継ぎ早に質問すると、やつは光零れる美しい髪を優雅に手で払って言った。
「神は、たくさんいる。とにかく、あんたに了承して貰わないと話が進まないんだよね。それにちょっと面倒臭くなってきた。よし、カメヤマムツミ、取引しよう」
「は?」
「幸せな過去記憶では不満足なお前、一体何を望むんだ?多少ルール違反ではあるが、バレない程度なら、俺はあんたにそれを与えよう」
わお。いきなり俗世間臭くなってきたわよ!
私はにやりとして両手をもんだ。
「だから3億円。現金で。今、ここに」
「それは無理だ。人間界のものを勝手に使うことは出来ない。あんたを物理的に浮かせる、そういうことなら可能だが」
「チッ!役に立たない」
「・・・また神を侮辱したな?」
「うるさいわね、気が散るから黙っててよ!」
私は眉間に皺を寄せ、ううーんと唸った。幸せな記憶と引き換え・・・成る程、それでは確かにこの世の物には一切手を触れていないってことになる。私の記憶だけを変えるのであれば。でもそんなの要らないしな。