カメカミ幸福論


 目の前にいる、やたらとキラキラしている美形の男、私の願いを叶えてくれるらしい。

 だけど、願い・・・願い?私、何が欲しいってわけ?

 どんどん眉間に皺が寄っていくのが判った。だって、物理的な物は却下でそれ以外の願いなどと聞かれるとは。

 出世?ううん、私はあの会社には既に未練がない。期待もしないからあそこで出世したいとは思わない。

 恋人?ううん、それも面倒臭い。そんなに性欲も激しくないし、自分一人のぐーたら生活には満足している(はず)。

 ちょっとした毎日のラッキー?いやいや、それも信号に引っかからなくなったとか、エレベーターを待たなくてよくなったとか、そんなんだったらちょっと悲しい。

 じゃあ?

 私、私は――――――――――・・・

 神が、また笑った。

「最終日まででいい。考えておくんだな。俺はあんたを観察する。あんたはいつも通りに生活すればいいんだ。邪魔はしないし、手も出さない。難しいことなどない」

 唇が乾いていた。私は舌で湿らせて、無意識の内に両手に力を込めていた。

「・・・私は、普段通りに生活するだけ?」

「そう~」

「あんたの姿は見えないの?」

「お望みならそうするよ」


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