カメカミ幸福論


「ずっと生活を覗かれる?会社も、家でも?」

「そう。まあ、大体の行動は一緒にやる」

「お風呂やトイレは?」

「観察して欲しいならするけど~」

 すぐさま両手で大きくバッテンを作ってみせた。やめてくれ。見せたいものでもないし、見せれるものでもないって自覚はある。

 神が機嫌よさそうな顔をした。

「いいってこと?じゃあ早速今から―――――――」

「ちっげーよ!」

 私はハッキリキッパリサッパリと首を振る。

「バカ男!だ~れがそんな気持ち悪いこと了解するかってーの!生活をずっと覗かれるなんて私はごめんよ!そんな趣味ないです。お断りします、どうぞお引取り下さい。神とか言ってもどうせあんたなんてその他大勢の神の一人らしいし、大したことないんでしょ―――――――――――」

 パッと、私は喉を両手で押さえた。

 ・・・・・あれ?

 言葉が、出なくなった。

 ああ?おかしい、溢れ出ていた言葉はどこにいった?あらら?ちょっとちょっと・・・。

 何かの気配を感じて顔を上げる。

 不穏な気配を撒き散らしているのは、どうやら目の前にいる派手な男みたいだった。声が出なくなったままで、私はまた復活した冷や汗を背中に感じながら神の顔を見上げる。すると、そこには世にも綺麗な顔が、怒りに歪んで私を見下ろしていた。


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