カメカミ幸福論
・・・・・ひいいいいいいいいいい。
細めた瞳からはあからさまな怒気が見える。いまやハッキリと赤色に光るその両目からは、ビームが出ているようだった。形の良い口元を歪めて、ダンが言った。
「―――――――確かに俺はひよっこの神だが、たかだか人間風情にそこまで言われるとは思わなかった。情けない状態だな、本当に。力もさほどないとは言え、それでもお前程度、何とでもなるというのに」
言葉が出ない。それに、どうやら体も動かないらしい。そしてそれは、この男のせい、らしい・・・。
あ、ヤバイわ、私ったら。
何だか知らないけど、とにかく不思議な力を持ってるらしいこの相手を怒らせちゃダメだって、あれほど自分でも思ってたのに何てこと。
このままでは―――――――――――――
「もうお前に好きなものを与えなどしない。お前は一度断ったのだから。・・・二択で選べ」
ダンが言った。
「このままなかったことにするなら、今日の夕方から今までの記憶を生きる希望もなくすような酷く辛いものに変えてやろう。そして俺は天上へ帰る。心を入れ替えて、協力するというなら先ほどの暴言は一度忘れてやろう、そして、ちゃんと幸福な記憶を与えてやる」
こめかみから、汗が伝い落ちるのを感じた。
見開いた目の向こう側、見たこともないような綺麗な顔が、残酷そうに微笑している。
「・・・さあ、どちらにする?」
殆ど選ぶ余地などない、究極の二択。・・・こんなの、アリ?