カメカミ幸福論
第2章 神、同居する
・観察スタート
夏前の朝の光は美しかった。
十分な輝きを持って、光はそこら中を明るく照らし、緑達が風に時折揺れている。
ただし、私にはそれを有難く味わう余裕がなかった。
だってうんざりしていたのだ。その原因は、私の右隣を飛ぶ謎の飛行物体にある。
いやいや、謎でも何でもないのだけれど。この物体は、昨日いきなり非常識なやり方で現れて繊細な神経の私をいたく苦しめた、自称・神(様つけでなんて呼んでやらん)の男、ダンだ。
自称というのは、私はまだヤツが神であるなんて信じていないからだった。
だって身分証明書だしなさいって言ってもそんなものないって返されたんだもーん。だったら何をもって神と証明するのだ!
確かにダンは不思議な力を使う。だけど、ただ外見が派手な超能力者なのだ、とあくまでも私は思いたい。
だから、昨日理不尽にも「長いから要約:3ヶ月の間、君の生活をストーカーさせてね(はあと)」なんていう約束を交わすにあたって、私はヤツのことをダンと呼び捨てにすることを宣言したのだ。
だって、それがアンタの名前なんでしょ?って。
ヤツはムスッとして(それでも綺麗な顔だったのが更にムカついた)、口元を歪めていたけれど、それに関して文句は言わなかった。
そして、私がとりあえず今晩は帰って頂戴、というと、キョトンとしたのだ。
「何言っている。今からだと言っただろ?もう観察は始まってるんだから」
「え、じゃあまさか、ここに住むっていうの?」