カメカミ幸福論
「自分で言ってちゃダメですよ!亀山さんたら!」
ぷりぷりと怒りながら行ってしまう。仕事の出来る女である後輩の山本美紀ちゃんはしっかりしている上に外見も清楚系で大変良い。なのに彼氏ナシ。一体何故なのだ!形の良い彼女の後姿をじ~っと見ながら、私は世間の見る目がない男共を心の中でこき下ろした。
いい女が、あそこにいるぞ~。
私は亀山睦という。先日30歳になったばかりの、自分で言うのも何だが窓際OLだ。
つっても、最初からこんな態度だったわけでは勿論ない。
大学を卒業してから拾ってくれた唯一の会社であるこの文具用品会社に就職して、そこから5年間は頑張った。新しいことを覚えるのは好きだったし、ただ単に、出来ていくようになる仕事も面白かったのだ。それに大学卒業と同時に一人暮らしを始めていたから、そのお金を稼がなければならないって自分で強く思っていたからもある。
だけど、電卓を神業のごとく使えるようになり、この会社、少なくとも自分がいる部署内で判らない仕事はほぼない、と断言出来るようになった頃、突然現実を思い知ることになる。
うちの会社は、明治生まれのガチガチ頭の会長が、未だに運営している。その人の頭の中には、女の子はスカートをはいてお茶を配り、ニコニコを笑っていればいい、という考えが根強くあるようだった。
冷え性もあるしということで、一度女性陣が制服の変更願いを出したことがあるのだ。スカートはやめましょうって。ほら、キャビンアテンダントだってスカートじゃなくなってますよ~って。看護師さんを見てくださいって。すると、会長サマからの返事はこれ「婦女子たるもの、男子のような格好はするべからず」。