カメカミ幸福論
暇に任せて、私はブツブツ小言を続けるダンを見上げて言った。ヤツは今、天井辺りを浮遊中。
「そういえば、観察しててノートなんかには書かないの?どうやって記録とってるの、あんた」
ん?とダンが振り返る。その度にキラキラと光をまくプラチナブロンドにも、そろそろ慣れてきたころだ。・・・つまり、自分のごわごわの黒髪と比べて凹んだりしないってこと。ああ、この煌く艶髪をガシッと掴んで一気にちょん切ってやったらさぞかしスッキリするだろうに!大体見た目が暑いのだよ、ヤツは。
「記録はちゃんととっている。大丈夫だ、今のところ順調だ。ただ・・・」
「ただ~?」
「こーんなにダラダラしていて、ムツミは本当に満足?一度の人生を輝かせようとは思わないのか?」
ああ、また始まった。私はビールを飲み干して、その空いた缶をダンへ向かって投げてみる。案外身のこなしの軽いヤツはそれを簡単に避けて、それからブツブツいいながら缶を拾ってゴミ箱へと入れた。
「愚かな人間め」
「この状態だからこそ、あんたの観察対象になったんでしょ?ならいいじゃないのよ、それで」
ダンは黙った。それは確かにそうだな、とか思っているんだろう。毎日2回は同じ質問をするのだ。最初は怒ったり呆れたり無視したりと色々した私も、もう今では同じこと聞くんだから同じ返答をしてやろうと思うようになっていた。
・・・ああ、不毛。私の休日が―――――――――
その時、滅多に鳴らない携帯電話が鳴った。