カメカミ幸福論
「わあ!」
「うわ!」
私と同時にダンも驚いて、ふわりと浮かび上がる。多分、これが電話であるとはヤツは気付いていなかったのだろう。だって一度も鳴ったことないもんね。
「何だ何だ~、誰からよ~、もう!」
私はずりずりと床を這いずって机までいき、何とか携帯を手にした。
着信。・・・実家から。
「はいはーい」
嫌な予感はしたのだ。だけれども、これで電話に出なかったら大変なことになると知っていた。だから大人しく私は携帯電話を耳に当てる。
『あ、睦?元気してるの?あんたちっとも連絡寄越さないから、母さん心配で!』
思ったとおりの言葉を喋りだす母親だ。毎回一緒よ、母さん。そんで、心配してるというなら半年間の音信不通はお互い様でしょ、そう言ってみたらどう反応するだろうか。
「・・・あー、はいはい、ごめんね」
とりあえず謝っておく。そうすれば本題にいくまでの時間がかなり短縮されるはずだから。
母親はため息をついたあと、今日は急いでいたらしくすぐに本題に入った。曰く、急だけど祖父の誕生日祝いをすることにしたらしい。もう体が弱ってしまった父方の祖父の、90歳の誕生日が近いそうで、他の都合もあって今日の夜に実家に家族・親戚を集合させようということが決定したと。
え。今日?今これから?