カメカミ幸福論
「あ、妹に紹介してやって。俺は間に合ってるから」
「え!?いやいや、叔父さん、先に兄貴に宜しく。やっぱり順番は守らなくちゃねえ!」
「ほら、女はリミットがあるとかで」
「いや、男は会社での体面もあるだろうし」
がるるるるる。机上では無表情で睨みあい、机下では耳栓の激しい取り合いをしていた。
叔父さんは兄妹が会話に乗ってきたので喜んで、兄貴に向き直る。
「じゃあ陽介君、うちの会社の女の子で―――――」
兄貴が私から視線を外して体を戻し、パッと片手を顔の前に出した。
「結構。大変な女が一人、周囲にいるんだ。それで手一杯だから」
へえ。私がその言葉を頭の中で転がしていると、次はおばさんが私に言う。
「なら睦ちゃん―――――」
「いえいえ!私も大変な男が一人、周囲にいるので。それで手一杯です!」
つか、それは今ふわふわと叔父さんの後ろを浮遊してるよ。
ダンと目が会ったので、あっかんべーをしたい気持ちを抑えるのに苦労した。
従姉妹が面白そうに私たちを見て、自分の子供の世話を焼きに席を立つ。心底残念そうな父母その他を無視して、私は兄貴にボソッと聞いた。