カメカミ幸福論
・ダンの行動
「ムツミ」
実家からの帰り道、時間は11時を過ぎていて、日曜の夜の終電近くで乗客は他に誰もいなかった。
この車両にはダンと私だけ。ヤツは通路挟んで私の前の座席に座っている。
「な~に~?」
他に誰もいないので、傍目には独り言だけれども怪しくないから普通の声で返した。小声じゃなくて会話ができるって素敵だわ。
実家で大量とは言わないけれどそれなりにお酒も飲んできた私は、ほろ酔いで、もうあと暫くは実家に帰らなくていいと思って上機嫌だった。
ダンはその綺麗な瞳で私をじっと見て、しばらく言いにくそうにしたあと、ボソッと聞いた。
「お前は、男に興味がないのか?」
「あん?」
だれきって座席にもたれていた私は半眼だった瞳をパチっと開けた。
「結婚に興味がないと今日ずっと言っていたな~と思って」
何なのだ、一体。まさか、この小姑、今度は私の結婚問題まで関心をもったとか?
私は怪訝に思いながらも、こういう話題になった時にいつもやるように断言する。
「結婚には興味、ないわね」
「どうして?」