カメカミ幸福論
私はムカついてイライラと爪を噛む。
座席にだらりともたれかかったままで睨みつける私に、ダンが前から声を飛ばした。
「お前には、色気がない」
カッチーン!
「ほっとけっつーの!!」
何なのよ~!思わず椅子から背中を離して噛み付きかける私から目を離さず、ダンは考え込むような顔のまま言った。
「異性が長らく側におらず、恋愛感情を抱く相手もいない。だからだろうな~・・・。うーん」
「だから、私はそれで満足してるのよ。あんたに関係ないでしょ、もう~!」
「そういうわけにはいかない」
今や私は立ち上がり、仁王立ちになってダンを見下ろす。
「何故なのか五文字以内で述べよ!」
「寂しそうだからだ」
・・・は?
私はダンをじっとみた。
―――――――寂しそう、だからだ。・・・って五文字じゃないじゃん。
言葉をなくしたままで私は神を見ている。電車の揺れはヤツには関係ないらしく、微動だにせずにダンは話す。
「ムツミは、寂しいのにマヒしている。慣れすぎていてそれが当たり前になり、求めていることに気がついていない」
・・・断言しちゃってるよ。おいおい。私は呆気に取られていたけれど、そこでちょっと口を挟んでみた。
「いや、寂しいとか思ってないよ、私」
ダンがふ、っと笑った。