カメカミ幸福論
「ムツミの人生をもっと輝かせたらどうだ?」
「―――――――」
「俺は、ムツミに幸せになって欲し―――――――」
「やっかましいいいい~!!」
腰に当てていた両手を解放して、私はダンに向かって突進した。そしてスナップをきかせて手を振りおろす。
私の人生を、生活を、そんな風に断言して欲しくなかった。あんたに一体何が判る、あんたが一体私の何を知っている?
そんな細かいことを考えたかは判らない。だけども、自分でも制御出来ない強烈な怒りでもって、私はダンに殴りかかったのだ。
―――――――――けど、うまくいかなかった。
「落ち着け」
スイ~っとダンに避けられて、勢い余って座席に突っ込んだだけ。動きが早すぎて、それでなくても頭に血が上っている私にはダンを追いかけるなんて無理な話だった。
畜生!
悔しさから突き出した右足も空振り。ヤツはす、す、と避けて風のように動き、そのままで私の目の前に立つ。
「人間(お前)は神(俺)に触れない。だけど―――――――」
パシッと両手を掴まれて、目を見開いたままの私は結構な力で引っ張られる。
「神(俺)は人間(お前)を触ることが出来るんだ」
「あ」
視界がいきなり、キラキラで埋められた。