カメカミ幸福論
私は突然の成り行きに体を固めたままで声も出せずにいる。
夜を走る誰もいない電車の中、私はダンの腕の中。
ふんわりと光輝く、大きくて強い力の神に、全身を抱きしめられていた。
ダンの着ている衣の中に絡め取られる。プラチナブロンドの細くて長い髪の毛が私の鼻先や顎をくすぐる。
・・・これは、一体――――――――――――
優しい感触の声が響いた。
「本音を言われて怒るということは、まだ諦めきれてないってことだろう」
怒鳴ったり暴れたりが出来なかった。ダンの能力でそうだったわけではないと思う。突然のハグは、それ自体が非常に久しぶりな私から言葉も力も奪っていってしまったらしい。
ただ、私は驚いて固まっていた。
目も口もあけっぱなしで。
片手を私の腰にまわし、ダンはしっかりと私を抱き寄せる。そうしておいて、あいている片手でゆっくりと頭を撫でてきた。
ヤツの、緑の間を吹きぬける風のような温かくて優しい匂いが私を包み、それから明るく涼やかな声が耳の中で響く。
「自分で封印してしまった思いがあるはずだ。こんな予定じゃなかった、こんなはずじゃなかった、そう思うなら、またやってみればいいんだ。ムツミは、自分で自分をダメにしていることに気がついていない」
じんわりと視界が潤みだしたのが判った。
自分で自分をダメに?ちょっとちょっと、どうして私はこんなひよっこ神に、説教されてるの―――――――・・・