カメカミ幸福論
「消えて、バカ神!この人生はあんたのものじゃないのよ、何が何でも自分の価値観に当てはめようとするのを止めてちょうだい!」
と、私は言ったつもりだった。だけどすんごい涙を流しているせいで、ついでに鼻も壊れていたから酷い発音になっていた。全部に濁点をつけてちょうど、みたいな。
とにかくそう叫ぶみたいにいって、あとは完全無視をしたのだ。
一度か二度は、ダンが呼びかける声が聞こえたような気がする。だけど私は既に子供みたいな号泣をしていて、それには見向きもしなかった。
自分の今までをいとも簡単に否定されたことが悔しかったし、少しばかり悲しかった。私が自分に持っている「これでいいのよ」という自信。それを崩されてしまったら、一体何を拠り所にしていけばいいのだ。この理不尽な世の中で、いつも足を地面につけて踏ん張っている。それはいくらダラダラ生きている私でも、失くしてはいけないプライドだったのに。
誰もいない電車の中、私は自分の降りるべき駅に着くまでおいおいと盛大に泣いた。
頭の中が空っぽになって真っ白に染まるくらい、何も考えずにぎゃんぎゃん泣きまくった。
車掌さんが一度様子を見にきたのかもしれない。だとしても、一人で座席に突っ伏して泣き崩れる深夜の電車女は怖かったことだろう。とにかく邪魔はされなかった。
公共の乗り物で泣いたことなど勿論ない。
しかも怪獣が叫ぶみたいな号泣なんて、自分がするとは思わなかった。