カメカミ幸福論


 最初は悔しさから泣いていたのだろうと思うけれど、最後の方は泣くという行為自体が目的になっていて、とにかく私は声を上げて泣きまくったのだ。

 滅茶苦茶迷惑な乗客だ。車掌さん、それからあの電車のあの座席、すみません。騒音苦情や私の涙でぬれてしまった座席の弁償請求は、どうぞあのバカ神にして下さい。

 興奮していたけれど、耳はちゃんと自分の最寄駅のアナウンスをキャッチして、私はヨロヨロと立ち上がる。知らない間にダンは姿を消していて、私はまだぐずぐず言わせながらホームに降り立った。

 ・・・泣いて、ちょっとスッキリした。いや、かなり、だわ。かなりスッキリした。

 別に泣きたかったわけではないと思うのだけれど、ヤツに対して積もった怒りはあの涙で発散できた。それから日々の少しずつの、色んなものに対する思いとか。多分。

 夜空には星、その薄い光を見ながらぼーっとアパートまで帰る。ダンはきっと近くにいたのだろうけれど、まだ姿は見せなかった。

 たまには泣くのもいいのかもしれない。私は暗い夜道を歩きながら、ぼんやりとそんなことを考えた。家族が見たらビックリするような見事な号泣だった・・・。今までは泣く理由がなかっただけで、とにかくさっきはその理由があったのだし。

 だけど。

 折角の酒も、抜けちゃったじゃないのよ・・・・。



 ――――――――――あのボケ神め。



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