カメカミ幸福論
・喫煙コーナーの会話
7月の真ん中だった。
梅雨が明けてから太陽は真っ直ぐに頭の上までのぼり、毎日気温が30度をぶっちぎるような気温。ここ3年、気合抜きまくりでうだうだ~と会社で過ごしていた私は、ダンが来てからはどこにでもひっついて来るダンの存在を忘れるために、結構まともに働いていた。
つまり、やる気があって楽しくも必死だった昔ほどではないにせよ、知識を出し惜しみせずに出し、振り分けられた仕事は期限内にミスなしで終わらせるという至って普通のOLになったのだ。
事務所内でさほど迷惑をかけない女になった、と言えばいいだろうか。そのお陰で事務所内の皆の視線が妙に柔らかく、以前ほど周囲を遮断しなくてもいやすくなったのは、まあ良かった。それに、ダンのことも頭から消せるし。
ヤツが来なかったらこうするエネルギーは沸かなかったはずなので、その点はちょっぴりヤツに感謝してもいい・・・かもしれない。本人には言わないけれど。
ミーンミンミンと喧しくセミが街路樹で合唱している。
その中で、私はふわふわと浮かぶダンを連れて、美紀ちゃんと会社の廊下を歩いていた。
昼休みだった。
ここ1ヶ月ほどまともに働く私に喜んで、最近の美紀ちゃんは非常に機嫌が良かった。なので前はたま~にだったランチ同行が、続いている。
私としても彼女は好きだし、ダンと二人で事務所内にこもり、無言かつもそもそとご飯を食べるよりはよっぽどいいってんでそれを喜んでいた。