カメカミ幸福論
ああ、何だ、飲み会の話か――――――――そう思ったところで、もう一人の同期の沢井が話すのが聞こえた。
「今回はいつものママ組と森と中村さんがこれないんだっけ?結構人数減るのか?」
ママ組というのは寿退社した後、今は一人や二人子供がいる同期生の女性達。結婚して退社しても、全員と連絡が取れてるこの同期生は、ほんと珍しいと思う。
だけど彼女達が夜の飲み会に参加出来る事は滅多にないので、参加する方もそのつもりでいることが多い。
缶を開ける音。それと同時に倉井の返答が聞こえた。
「えーっと、10人だな。飲み放題でいいんだろ?」
「え?」
え?が、小暮と沢井が重なった。私も一瞬怪訝に思ってつい足が止まる。
だって、このメンバー、それにママ組とか、森と中村さんとくれば・・・同期じゃない、皆?と思ったからだった。
そういえば、小暮がこの前言っていた同期の飲み会って、これのこと?
・・・私、誘われてないけど。
ここで、さっさと歩くべきだったのだ。ところが成り行きに気付いた私が足を踏み出す前に、小暮と沢井が倉井に問いただしてしまった。
「――――――・・・10人?何で?11人だろ?」
わお、痛っ。私はつい顔を顰める。次の展開がわかってしまって、早くここを立ち去ろうと焦る。なのに今度は美紀ちゃんが殆ど立ち止まってしまっていた。彼女の顔は、真っ直ぐに廊下突き当たりの喫煙コーナーを向いている。