カメカミ幸福論


「俺ら18人同期で、ママ組が5人、それに森と中村が抜きで・・・11人でしょ。他に誰がこれないんだ?」

 倉井が、ああ、と笑った。

「あー、亀山は声かけてねーんだわ」

「は?」

 また、小暮と沢井の声が重なった。

 私は瞬間、横目だけ動かして美紀ちゃんを見た。彼女はポカンとした顔で固まっている。

 ・・・あーあ、聞かなくていいこと聞いちゃったねえ~・・・。私は疲れて脱力する。美紀ちゃんが可哀想だった。きっと今この子の中では色んな思いがぐるぐると渦巻いているはず・・・。

 ま、とにかくここを離れよう。美紀ちゃんの腕を軽く叩いて、私はエレベーターを目指す。すると奥の喫煙所から、小暮の低い声が流れた。

「・・・来れない、じゃなくて、声かけてない?どういうことだよ、倉井」

 沢井ともう一人、別の男性も無言だった。多分、喫煙コーナーは今、嫌な空気が流れているはずだ。

 それに気がつかないのか、気付いても何てことないのか倉井が笑いながら言った。

「ん?だってあいつ、いる?ママ組も中村さんも来ないなら、女は亀山だけだし、あいつも居心地悪いかなーって。それに、結婚も仕事も出来ない女とか、ほとほと情けなく感じないか?」

 あいつ見てるとムカつくんだよ。窓際族の亀山と同期とか、恥かしいわ。そう倉井が言った時に、私はヤバイと思った。パッと隣を振り返ると、案の定、美紀ちゃんは顔を真っ赤にしている。

 ・・・うお、怒ってるじゃん!




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