カメカミ幸福論
よし、今夜は女の子とデートだ(背後霊つきだけど)!
そんなこんなで何とかムカつきから解放されたらしい美紀ちゃんが立ち直ったので、事務所も普段の空気になる。私は自分に振られた仕事を片付けながら、近寄ってきたダンを無視しようと努力していた。
美紀ちゃんを誘ってから、何故かダンが天井近くから降りてきたのだ。
「ムツミ」
「・・・」
「ムツミ~」
「・・・今は仕事中なのよ」
ボソッと呟く。キーボードを叩く音を大きくして、自分の声を消した。ダンは私の背後をウロウロしながら肩をポンポンと叩いてくる。
「じゃあここから出よう。ムツミ~」
「・・・」
「ムツミってば~。俺が一人で喋ってても意味ないからさ、ね、ほら、外に行こう」
「・・・」
「おーい、カメ女~」
「・・・」
「仕方ないな~」
ダンは返事をしない私の前の机にどっかりと腰掛けて、これ以上ないくらいの邪魔物になった。パソコンと自分の間に白くて綺麗でキラキラ光る物体。
私はイライラを抑えながら、何とかあっちに行け、のジェスチャーを控えめにする。うおおおお~、このお綺麗な顔に研いだ爪を突き立てたい!