カメカミ幸福論
さっきはパソコンを殴りたかったわけではない、勿論、バカ神を殴りたかったのだ。だけれどもそれは叶わなかった。以前にダンがいった、人間は神には触れないってのは本当だった模様だ。私の手は目の前、机に腰掛けるダンの体をすり抜けてしまったのだから。
廊下を早足で駆け抜ける。早く早く資料室に入り、あのバカ神を怒鳴りつけたかったのだ。もうすぐ、もうすぐで資料室――――――――・・・
資料室へ着く、ドアを開ける、中が無人なのを確かめる、それから乱暴にドアを閉めて、後ろについてきたダンを睨み付けた。
「こ~の~クソバカ神~っ!!」
「おや、怒ってるのか、ムツミ?」
うおおおー!この煮えたぎる怒りをどこにぶつければいいのだ~!!私はイメージの上ではゴ〇ラのように東京タワーを破壊していた。
「あんたねえ!いい加減にしなさいよ!邪魔しないんじゃなかったの!?」
神は殴ることが出来ないから、仕方なく手のひらで本棚を叩いた。パンパンと思いっきり。
ダンはドアの所から私を見て、にやりと笑う。
・・・うん?あら、どうしたのかしら。私は怪訝に思って一瞬怒りが覚めた。いつもと、ダンの様子が違うのだ。言葉使いはそこらを歩いているちゃらちゃらした兄ちゃんのようだが、やはり真面目な態度や対応が「神がいるならこんなのかもねえ」と勝手に思っていたようなものだったのだ。
だから、いつものダンならここは真顔でシレっと謝るはず・・・。それは悪かった、とか言って。
だけど目の前で、ダンは色気増量キャンペーン中の微笑みでこちらを見ている。それにあんなこと、今までのダンなら言わなかっただろう・・・キスするぞ、とか。