カメカミ幸福論


 私は疲れの為にひく~くひく~くなった声でぼそぼそと言う。

「・・・私を観察対象から外して頂戴。お願いだから」

 ダンはふふんと口角を吊り上げた。

「い~や~だ~ね」

「・・・」

「俺は頭にきたんだよ。あんたみたいな生き物みてるとイライラくる。自分で幸せを掴み取るんだよ、ムツミ。それを見届けるまでは、観察はやめない」

何だってー!冷や汗が出てきた。私はそれを無意識に手のひらで拭いながら、何とか声を出す。

「あんた学生って言ってなかった!?なら卒業はどうすんのよ!?」

 うがあ!と叫んだ私に、ダンはふわふわと軽やかに浮かびながらハハハハと笑う。

「そんなの問題ない。興味本位でいってたところだ。俺はもう決めたんだ、ついさっきね」

「あ?」

「ムツミが、自力で幸せになろうと努力するまで、観察は続けるんだ」

「そんな迷惑な!」

 それって一体どんな修行!?これは夢なの?ああ、もしそうならダンが現れたあの夕方からを全部夢にして下さい。どうか、どうか――――――――――

 涼やかな声が天井から降って来た。

「だから、言ってるだろう」

 見上げる先には美形の男。プラチナブロンドの、極上の美形が笑っている。

「全て終われば、俺がいた期間のことは幸せな過去の記憶にかえてやるって。だからお前は、少しでも早く努力を始めることだ。そうすればそれだけ、俺が離れる日も近くなるんだよ――――――――」



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