カメカミ幸福論
「おにーさん!生中お代わりね~!」
私は店の奥に向かってジョッキを上げながらそう叫ぶ。店中のいたるところから「はーい!」と声が返って来た。そうそう、やっぱり飲み屋はこの威勢がなけりゃ。満足してニコニコしていると、前の席に座った美紀ちゃんが呆れた顔で私を見ていた。
「・・・亀山さん、実は飲兵衛ですか?4杯目ですけど」
「ん?違うわよ。面白くないことが続くから、ここで一気に厄落とししたいわけ」
スルメの七味マヨネーズを口に突っ込みながらそう答えると、2杯めのチューハイグラスを握り締めながら、美紀ちゃんが腹立たしそうに頷いた。
「昼間のあれですね!?ほんと、超~むかつきました、私!」
・・・昼間のアレ?あれってなんだ?私は瞬きを繰り返して酔っ払った頭を働かせる。そして、ようやく喫煙コーナーの、我が同期たちの会話であると思い当たった。
・・・ごめん、美紀ちゃん、忘れてたよ。
私は個人的に起こったムカつくこと―――――――背後霊みたいにひっついている神の暴動―――――――について言ってたんだけど~・・・。
仕事終わりで髪を解いた美紀ちゃんは本当に可愛かった。眼鏡のシルバーの柄がキラキラと照明に光って、ふんわりと広がった髪も光を発している。
「酷いですよ!亀山さんだけわざと除け者だなんて!小暮課長達が諌めてくださったからよかったようなものの、私が蹴り倒しにいくところでした!」