カメカミ幸福論
流石に酔いが回ってきて、しかもその頃の愕然とした辛い気持ちを思い出したので、私は若干涙目だった。
頬杖をついてそう話していると、前の美紀ちゃんも心なしか涙ぐんでいる。
「それは酷いですよ。そんなこと一々言わなくてもいいじゃないですかねえ!誰なんですか、そのバカ上司は!?」
口の中に残った苦いビールを飲み込んで、私はぼんやりと返す。ああ、その課長、今は工場勤務になって会社にはいないのよ~って。
だけど、恨みなんてないのだ。
ただ私がやる気を失ってしまっただけなのだから。
ちょっとしんみりしちゃったところで、二人ともグラスが空なのに気がついた。
「お代わり、どうする?」
「亀山さんちょっと飲みすぎじゃないですか?もう止めた方が・・・」
美紀ちゃんがハッとしたように止めたけれど、私は酔ってだるくなった体を椅子に預けてちょいとばかし唸る。
「・・・うーん。だってまだ発散しきってないからなあ~」
え?と美紀ちゃんの声。あ、しまった、そう思った時には聡明な後輩の突っ込みが入っていた。
「まだ?同期会以外のことで、まだ何かストレスがあるんですか?そういえば、最近はえらく仕事をして下さるようになったのはどうしてですか、亀山さん?」
私は焦って体を起こす。しまった、いらないことまで言っちゃったよ!
「いえいえ、ええと、ほら!人間生きてるだけでそりゃあもう結構なストレスを受けるものでしょ!?」