エタニティ
今日はずっと智世と一緒にいたのに、そんなこと言う暇なんて無かった筈。

「同窓会の連絡があった時に。……坂野さんの弟って大学時代の後輩でさ、結構仲良かったんだ」

後輩の家に行ったつもりが坂野さんと鉢合わせしちゃってびっくりした、なんてエピソードを笑いながら言う葉山君。

「あの初耳なんだけど」

「俺、ミチに嫌われたと思ってたから。って、何頼む?」

「う、え。……ソルティー・ドッグ」

葉山君は小さく頷くと、ソルティ―・ドッグと自分用のバランタインの水割りを注文した。



「じゃ、久々の再会に」

何処となくぎこちない雰囲気を振り払うように、葉山君は笑みを浮かべて、グラスを合わせる。

「実はミチのこと坂野さんからたまに聞いてた、とか言ったらひく?」

「……智世から?」

一体、何をどの位話しているんだ、あの子。

「まあ、坂野さんは昔からミチの保護者みたいな子だったから、相手にしてくれなかったけど。……俺さ、すごい後悔してたんだ。あの日のこと」

「あの日って」

「ミチと映画行った日のこと」

それって……。

私の表情が明らかに曇ったのを見て、彼は慌てた様子で言葉を探す。

「いや、そうじゃなくって。あの後、殆ど自由登校だったけど、卒業するまでずっとミチに避けられてたから。あんなことしなきゃ良かったって、大事な友達失くしたって後悔」

どんな顔して会ったら良いのか分らなくて、葉山君を見ることすら出来なかったんだよね。

「ミチは曲がったことが嫌いな奴だったからさ、俺が彼女いるのにキスしたって、軽蔑されたと思ったんだ」
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