エタニティ
智世はうっとりした顔を作って私を見上げる。

「もう、美知佳ったら。相変わらず男前なこと言うんだから」

「男前って。……私、女なんですけど」

「昔の美知佳じゃないんだから、分ってるわよ」

智世は、濃紺のカシュクール型ワンピースを着ている私を見て、ニッコリ微笑んだ。

「凄く綺麗よ。ね、美知佳。今日は葉山君も来るみたいよ」

「う、うん。そうみたいね」

何となく声が上擦ると、智世はウフフフと、声を出して笑った。

「あれ、美知佳の初恋でしょ?」

「……まぁ」


葉山君は、3年生の時のクラスメート。

キリッとした一重の目元や落ち着いた雰囲気が一見不愛想な印象を与えたけれど、実は優しい男の子だった。

その頃の私と言えば、170cm超の身長と人より少しだけ優れた運動神経で、女子バスケ部のお姉様呼ばわりされている男勝りの痛い女で、周りも私のことなんて容赦なく男子扱いしてくる始末。

それは先生ですら、例外でなかった。

重いゴミ捨てを男子さながらに頼んできたり。

ある日、先生に頼まれた教材資料の片付けにアタフタしていた時も、他の男の子達は私の体格にかこつけて気軽に「頑張れ」と言うだけで。

でも彼だけは、言葉少なに「手伝うよ」と手を貸してくれたのだ。

そんなことが何度か重なって、私達は話しをするようになった。

我ながら単純だけど、私を唯一女の子扱いしてくれる彼に、心惹かれた。
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