大好きな君に最高のチョコを
バレンタイン
 いつもの待ち合わせ場所。

 いつもと同じように彼を待つのに、どうしてこんなにも緊張しているんだろう。

 去年の2月14日とは、違うドキドキを感じる。

 すべてが特別なものに見えてくるような気がする。




「まだかなぁ…。先に行っちゃおっかなぁ…。」

 なんて言ってみるけど、彼に早く会いたいのが本音。

 だってうるさいくらい心臓がドキドキいってるもの。

「あぁ~もう!落ち着くんだ!花音!平常心…平常心…平常心……。」

 私は気持ちを落ち着かせようと、一生懸命となえていた。




 平常心…平常心…平常心…

「花音?」

 平常心…平常心んんんんんんん…

「おい!花音ってば!!」

「ほえ?」

 はっと我にかえり、顔をあげると私の彼 星名 秀斗。

 見上げるほどの高身長。ツンツンとした茶髪。全体的に「不良」と分類される。




 そんな秀斗は不機嫌そうに私を見下ろしていた。

「はぁ~。呼んでんのに返事しろよ。」

 秀斗は呆れたように言った。

「う……。ごめんなさい。」

 やっちゃった。怒らせちゃったよ~。

 私はがっくりとうつむいた。

 もぅ~!私のバカバカ!!あぁ…泣きそう…。




「花音。顔あげろ。」

「いやだ。許してくれるまであげない。ほんっとごめんなさい。」

 すると急に秀斗の大きな手がのびてきて、私の顔を自分にむけた。



 
 秀斗の顔が目の前にきて、さっきまで落ち着いてきていた心臓が、また激しく動いた。

 顔に熱がのぼってくるのがわかる。秀斗に触れられているところが熱くなっていく。

「なっ…なに?」

 秀斗の顔がどんどん近づいてくる。

 ま、まさかこの展開は…

「ちょっ!ま、待って待って!みんな見てるし!こんなところで!」

 秀斗は何も言わない。



 ウワーン!聞いてない!!

 抵抗もまったくできない。ワタシは意を決して、ギュッと目をつむる。

 さぁこい!


 
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥あれ?


 おかしい。いつまでたっても何も感じない。

 ゆっくりと目を開けると、秀斗がニヤニヤと笑ってた。

「そんな簡単にキスするわけねぇじゃん。それともしてほしかったのか?こんなところで?」

「ちっちがう!!!わぁ~もうヤダヤダ!!」

 急に恥ずかしくなって、秀斗から離れる。



 まだニヤニヤと笑ったままの秀斗は「どうだか…」とつぶやくと、ワタシに背をむけ
歩き出した。

「あっ!ち、ちょっと待って!」

 私はあわてて秀斗のあとを追いかけた。



 横に並んで秀斗の顔を見上げると、「見んな。」って言ってそっぽをむいた。

 でもね、見えちゃったんです。秀斗の顔が真っ赤だったこと。

 自分であんなことしといて照れてる…。くっ…カワイイ。

 思わず笑みがこぼれた。



 やっぱ好きだなぁ 秀斗のこと。

 
 
 
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