大好きな君に最高のチョコを
「ねぇ、秀斗。
今日はさぁ、あの場所に寄って帰っていいかなぁ?」
「あの場所に行って何するんだ?」
まさかそう聞かれるとは、思っていなかったので私はあせった。
「えっと… なんていうか… そのぉ…」
「? まぁよくわかんねぇけど、いいぜ。
俺も行きてぇって思ってたから。」
「そっか。ありがとう。」
よかった。
まだ言えないよね…。
何をするかなんて。
それにしても、なんで秀斗も行きたいんだろう?
思い出の場所だからかな?
そう。
『あの場所』というのは、秀斗に告白された場所である。
学校の裏の小道を少し歩くと、木がアーチのようになっていて木漏れ日の
さしこんでいる、とっても素敵な場所。
私の大好きな場所で、大好きな秀斗に告白されたとき、
私はうれしすぎて、ボロボロと大泣きしてしまった。
「花音?どうした?
さっきからずっとぼけーっとして。」
私が思い出にふけっていると、
秀斗がいきなり声をかけてきた。
「え?あぁ。
ううん。なんでもないよ。」
「そっか。」
沈黙。
あれ?おかしい。
今日は秀斗がまったくしゃべらない。
いつもなら、友達がどうだったとか、授業が眠かったとか、
しゃべってるのに…。
まぁ、私もいつもよりかは、しゃべってないけどね。
やっぱり少し緊張しちゃってる。
なんだかこの沈黙がもっと緊張してしまいそう…。
そう思って私は、今日ずっと気になっていたことを
秀斗に聞くことにした。
「ねぇ 秀斗。
今日さぁ 誰かからチョコもらった?」
秀斗が驚いて私を見る。
そして、少し考えてからこう言った。
「まぁ 1個だけ…」
その言葉に私は驚いた。
こんなにかっこいいのに1個だけって…
って、いやいや。
そこじゃなくて…
「もらったの!? 誰に!?」
胸の奥がチクンとなる。
たしかに付き合っているのは私だけど、やっぱりライバルみたいな存在ができてしまうのは嫌だ。
秀斗の答えを聞きたくない。
「友達にもらった。」
「え?」
友達って女の友達でしょ?
私がいろいろと考えていると、秀斗が驚きの言葉を言った。
「俺の友達の石川っていうやつがすっげぇモテてさ。
そんで、もらいすぎていらねぇって言うから、1個もらった。」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
あぁ~ なるほど。
そういうことか。
なんかホッとした。
「やっぱり秀斗は秀斗だね。」
「どういう意味だよ?」
秀斗が不機嫌そうに聞いてくる。
「べっつに~」
ふふ。よかった。
それにしても
私にもこんな独占欲があったなんて、おどろき。
つながれた手を少し強くにぎってあげる。
『疑っちゃってごめんね。』 って。
気持ちが通じたのか、秀斗の顔はみるみる赤くなる。
それと同時に秀斗も少しにぎった手を強めた。
なんかすごいね。
私たち。
つながれた手だけで、会話してる。
その時、私はいつにまにかさっきまであった
緊張がなくなっていることに気づいた。
言葉がなくても私たちはつながってるんだ。
そう思うとうれしくなった。