素顔のキスは残業後に
恥ずかしさと気まずさで背中が丸くなる。恐る恐る振り返ると、長身でやたら顔のいい男が立っていた。

色の濃いモダン系なスーツ。
少し細身のデザインが彼のスタイルの良さを引き立たせている。


生ぬるい夜風が彼の前髪を揺らす。
髪と同じ黒い瞳に探るように見つめられて、少しだけ胸が震えた。

見つめ合う一瞬――

彼は私よりも先に視線を逸らすと、カツッと靴音を鳴して5つある大理石の石段を昇ってきた。


涼しげな瞳に長いまつ毛。スッと通った鼻筋。薄い唇。
158センチの私より20センチは高いと思うのに、顔は羨むほど小さい。

至近距離ではじめて見るその顔は文句をつけようがないほど整っていたから、

これはモテるわけだ、と納得した。
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